2018/7/8 その眼差しに目を向けられない

ある日の昼下がりの日曜日、友達に会いに図書館へ向かうため、わたしはバスに乗り込んだ。後ろの出口の真横にある席に座り、窓にもたれかかりながら外を眺める。何駅か過ぎたあと、ブロンドヘアーのかわいらしい少女がわたしの2つ前の席に座り、後から佇まいが何ともうつくしいご両親が来る。少女の隣にはお父さんが座り、その後ろにお母さんが座る。少女は外を眺めていて、わたしは窓に反射した少女の横顔を眺めていた。そのあと少女は何やらご両親に話しかけ、可愛らしいシールを手にしている。そのときの少女を見るお父さんのまなざしが、ほんとうにやさしくてやわらかくて、わたしは普段無意識にこなしているはずの呼吸がそのとき出来なくなったのを感じた。そのまなざしのまま、大きな手で少女の小さな頭を、包むようになでた。愛だ、と思った。とてもやさしくてやわらかくてしなやかで、何よりつよい。どんなものも、それにかなうことなんて間違いなくない。こんなに近いのに親子がとても遠くに感じてしまって、あまりにも眩しくて、わたしは再び目を外に向けた。空は雲で覆われていて、今にも雨が降りそうだった。