2020/2/29 最高に素晴らしいこと

冬が終わり、4年に一度の日が過ぎていく。暦の上では、春が来る。晴れやかな顔で、おだやかな心持ちで春を迎えることができないことが、何だか申し訳なく思う。つよめの風が吹き、波風立ったこころの海と、その上を重く垂れ込めた空が覆う。淡いピンクを纏う木々を見て、思わず口元が綻んでしまう日が待ち遠しい。

Netflixで「最高に素晴らしいこと」を観た。久しぶりに心が晴れないままにエンディングを迎えた。喉元が苦しくて、ただただ苦しかった。フィンチのまなざしが、最初から最後までうつくしく透き通っていて、悲しいくらいにまっすぐで、瞳の奥がずっとさみしかった。誰かをひとりにしないつよさとやさしさを、自らのために使うことは何故だかできない。そして誰かをすくうことは、必ずしも自らをすくうことにはなりえない。その分自分の中の孤独が鋭く、深く育ってしまうことさえある。誰かの回復が、自らの回復にもつながってくれたなら、そう望んでしまった自分の愚かさに悲しみすら覚えた。フィンチはもう既に、誰の愛も手も届かないところまで行ってしまった。どうすれば、どうすれば良かったんだろう。光の届かない深いところまで潜り込んでしまったあなたを、どうやったらすくいだせたんだろう。すくいだしたいなんて考えすらも、おこがましくて暴力的で傲慢で、結局はひどく傷つけてしまう結果につながってしまうのだろう。